実録(笑):イタリア・ポルトフィーノの奇跡
山頂の古城からポルトフィーノ全景を望む

実録(笑):イタリア・ポルトフィーノの奇跡

2021年9月26日 11:37
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mr. fukuyama

モーターボートの設計、開発に携わる事38年。 ボートに乗る事やボート釣りが好きなので、海には慣れているどころか、陸上にいるより海の上の方が安心する半魚人です。

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クルーズの旅から話題はズレるものの、連れも私も地中海クルーズに行きたい…と若干ウズウズしており、その想いが頭にしがみついて離れないので、クルーズに僅かに(笑)カスる昔話を一つ。

今から15年前、2006年当時、私は一つの課題に直面していた。

自分が設計総指揮を執っていた3,000万円級のモータークルーザーの開発方向性を決めあぐねていた事である。

あれやこれや考えた挙句、事細かなコンセプトを書き並べるよりも、まずはキャッチーなイメージを伝える事が大事だと思い、「今回設計するクルーザーがどんな景色の海に似合うイメージにしたいのか、それに当てはまる背景画像を探そう!」という事で、ネットで自分の意向に合致する海の風景画像を何日もかけて探して探して探しまくった。

そして行き着いたのがこの風景だ。建築物のデザインからイタリアっぽいのは想像に難くないが、この写真がどこを捉えた画像かは気にも留めなかった。

プレゼンでこの景色を役員に見せた時の掴みは上々、イメージも共有できて無事に決裁も通過。途中の1年半の経過は省くが、様々な難題もクリアしつつ、開発も完了。モータークルーザー【SC-30】をリリースする事が出来た。現在SR320FBと名を変え、14年経過して今なお売り続けられるロングセラー商品となった。  
【サロンクルーザー SC-30。グッドデザイン賞も2度受賞しました】
  【SC-30のメインサロン。シャワールームや寝室、キッチンも完備】

上記の仕事の完了と時を同じくして、イタリアはジェノバへの出張を指示された。ボート設計や技術力強化に有用な情報の収集が目的ではあるが、時間があれば地中海の街並みでも観光して楽しもうと考えた。

出張中の休日、滞在先からタクシーで30分ほどで行ける港町【ポルトフィーノ】を訪れた。 ハリウッドスターの隠れ家とも言われており期待はしていたのだが…ここは極めて観光俗化が進んでおり、結果的には「観光として訪れるには悪くないが、長居は無用だな…」という事でマリーナをフラフラ、山頂の古城をフラフラした後、滞在先に戻る事にした。 【ポルトフィーノにて。15年前、39歳の私。髪の毛がある!www】

行きは陸路だったので、復路は海上から美しい海岸線を見ながら帰ろう、という事で海上タクシーをチャーター。「いやー、やっぱ地中海サイコー!日本に帰りたくないなー☆」などと思いながら海岸線の写真を撮りまくっていた。【その時のタクシー。キャプテンが正しくイタリア人。カッコ良過ぎ】

そんなこんなで出張とはいえ楽しかったイタリア行脚も10日間で終了。そして帰国すれば待っているのは社内に対する出張報告会だ。

正直なところ私は過去を振り返る事が大の苦手で、こういう出張も自分の肉と糧になれば良い話。報告なんて面倒だなぁ・・・と思いつつも義務は義務。資料を作成しつつ、自分が撮影しまくった大量の画像を漁り、報告資料にフィットする写真を選んでいた。

「おや。この景色、昔どこかで見た記憶が…」

1枚の景色がデジャヴの様に頭の記憶に残っている様な気がして、う~ん、どこで見たんだっけなー、いや、気のせいか~?と散々考えた挙句、「ハッ!」っとなって、1年半前に作った資料…モータークルーザー開発を了承してもらうためのプレゼン資料を開き、表紙を見た。

果たしてそれは…私がポルトフィーノを出港してすぐの海岸線を撮影した画像とほぼ同じ海面から撮影されたものだったのだ。

下の画像が私が実際に撮影した景色である。前出の画像と見比べてほしい。

  【私の撮影した一枚。ポルトフィーノを出港してすぐの海岸線】

開発初期、当然イタリア出張など決まっていなかったし、ポルトフィーノに行く事すら考えに及ばないし、ましてやポルトフィーノから海路を渡るなんて想像できる筈もない。しかし、新機軸を贅沢に投入し、挑戦的で異端児な商品でありながらもベストセラーとなったモータークルーザーは、もしかしたら当時、あの一枚の画像をネットで見つけ出した瞬間、既に成功を約束されていたのかもしれない…。

心が震えた一瞬でした。

最後になりますが、ポルトフィーノはラインナップに乏しいですが、寄港地になっているクルーズを探す事は出来ます。クルーズでの寄港であれば、一度は上陸したい観光地である事は間違いありません。しかし、避暑的なバカンスを楽しみたければ、ポルトフィーノより車で30分北へ行った所にある「サンタ・マルゲリータ・リグレ」での宿泊をお勧めします。過去、仕事で2回ほど滞在しましたが、数ある海外出張での宿泊先で唯一「ここに住みたい。」と感じた、極めて牧歌的な小さな港町です。そして庶民的レストラン【A Santa Lucia】は是非とも立ち寄ってほしいです。
世界一美味しいマルゲリータとボンゴレビアンコが食べられます、マジで!
   【サンタ・マルゲリータ・リグレ。避暑地として有名です】

長文となりましたが、ここまで読み進めて頂いた奇特な皆さま、誠に感謝申し上げますm( )m

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クルーズの経験はまだまだですが、子供の頃から海に親しみ、そのままクルーザーなどボートの設計者になっちゃいましたww 私の名前…美洋(よしひろ)…英語にすると、ビューティフルオーシャン(爆 三代船乗りの家系で、付くべきして付いた宿命の名前だったかな、と(苦笑 時にはチョイとズレた視点でクルーズと海関係のblogをアップしてみたいと思いますb

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